美しいものにいつもほほえんでいたい

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いま思うこと ~第12回~

●「いのちの電話」公開講座でお話したことの反省

1月28日、新前橋駅近くの社会福祉総合センターで、「日本人の死生観」について講演する機会をいただきました。
「いのちの電話」といい、「死生観」といい、かなり重い講演会と感じていました。

「死生観」とは、死をどのように捉えるかということとして、私は考え、それなりの資料をよみ、メモをとりました。
この作業は厖大な資料にどのような姿勢でのぞむかという、かまえのようなことが必要でした。
時代を追って「死生観」の移り変わりをみるということや、具体的な人物を通して、その人の考え方をさぐっていくことなど、多岐にわたりました。
事務局で用意していただいたパンフレットに、「源氏物語を語り続けて35年」を通して見た「死生観」と書いてくださり、それをもとにお話をすればよいと初めは安易に考えていました。
源氏物語にみられる「死」の場面を例にして、その死にかかわる人物の心理の動きを通して、現代との接点を話せればと思ったのです。
しかし、光源氏の母桐壺更衣の死、それを控えての帝の心理、娘に先立たれた母君が、そのかなしい心中を帝の代理として遣わされた靱負命婦へ嘆く場面、夕顔・葵上・紫の上などの死を悲しむ光源氏の姿を通してなどを講演するためには、会場の方々が源氏物語を読んでいなければ、通じないと思いました。

そこで、まず「日本人」とはどのように説明したらよいかを捉えることから話しました。
それも世界での位置を考えてという視点にたってです。
「黄色人種・ウラルアルタイ語族・精神的支柱としての古典(源氏物語・芭蕉の俳句)」の三点をかかげました。
次に、「日本人の特徴的行動様式」について、「皆さん並み」のことばに象徴される同一行動様式を話しました。
みんなが同じ方向に向かうことがよいことで、それに逆らうことは許されない考え方です。
反体制的な考え方をする人を許容しないということです。
「みんな仲良し世界のこども」ではないことなどを具体例にして話しました。
また、「納骨」の行動様式に、日本人の死生観の姿をさぐる一つであるとも話しました。

結局、参加者の感想にありましたが、「話が多岐にわたり、言葉の面白さ・言葉の羅列で、本当に話したいことが見えなかった」という講演になってしまいました。
力量不足ということです。やはり、重い重い講演会でした。

●温暖化の恐怖。
その恐怖を超える人間の英知は まだあるのか。

報道されていますように、北半球ではこれまでにない温かい冬でした。
日本でも降雪地帯に雪が少なく、雪らしいものが降らなかったところもあるようです。
県内のスキー場の中でも休止、榛名湖など全面凍結しないために、「わかさぎ釣り」ができませんでした。
単純に暖いからよかったと喜べません。水不足のことです。
昨年のような記録的な降雪は、今になっては望めません。
せめて春雨が激しく降って欲しいと思います。
ただ、このごろのように降ると、すぐ被害につながるのは困りますが、雪が降らなかった分、降って欲しいものです。

地球全体から見れば、トウタル的に降水量の帳尻は合うようですが、これも温暖化がすすんでいる現在は、帳尻が合わなくなってきたといわれます。
南極・北極の氷の融ける速度が速くなっているからだそうです。
こうした地球の現状を認識する人は関係者のみで、多くの人は無関心です。
政治の動きが鈍く、依然として権力抗争にあけくれているからです。
人間の愚かさを痛切に感じます。
こうしたことから、このごろ人間不信になっています。
人間の英知を信じられなくなったからです。
人間が動物的になっている。人間は動物でありながら、それを超えてきたことをすっかり忘れているからです。
それは人間が生きて行くために、他の生物と共存していく社会秩序を築いてきたことをです。

さて、これまでの述べてきたことに対して、抽象的なものの言い方だと非難されましょう。
より具体的なこと、現実的なことをといわれましょう。
人間の愚かな行為、愚行をとりあげるにはその数が多いのです。
まわりは愚行だらけです。つまり目の前のこと、自分にかかわることだけしか見ていなのです。
自分の行為が他者へどうかかわるかということについては、まったく考えていないのです。
つまり想像力に欠けているのです。
イメージを描けないのです。
予測・予想ができないのです。
現在を20世紀の始まったころと比べてみますと、いかに今の人間が行動的でないことがわかります。
日露戦争・満州鉄道・労働争議・自然主義文学・韓国合併と大逆事件など、人間のありようをめぐって、国家権力の押さえこみも激しかったのですが、人間の怒りがありました。

現在はどうでしょうか。
怒りの声が少ないと感じます。それはイメージを描く力や歴史認識の欠如だと思います。
どうお考えになりますか。

(2007年2月掲載)