美しいものにいつもほほえんでいたい

美しいものにいつもほほえんでいたい

いま思うこと ~第1回~

地域に根ざした生涯教育を探りながら、高崎で源氏物語を読む「蘇芳(すおう)の会」を主宰して、来年30年を迎えます。

新宿の住友ビルで「朝日カルチャーセンター」が開催された翌年の昭和50年(1975)に始めました。
地方では、まだ生涯教育ということばが定着していませんでした。
古典を読む人たちは、有閑的な人の集まりであると誤解される面をもっていました。

集まった人たちは、「私の女学校時代は『ひめゆり部隊』と同世代。
古典はおろか、学校で学習する時間を満足に持てず、勤労動員などに追われ、修学旅行もありませんでした。
源氏物語を読むということは、女学校時代にもどれたとの思いがありますが、それ以上に、学べる時代が生きているうちにやってきた、という感慨が強くあります。
古典を読む幸せな時間を持てることが感激なのです。」という方々でした。

現在は、この人たちの次世代で、古典を読む幸せということから、現代の諸問題の解決の糸口や不安な心の癒しを求めて、古典に接しようとしています。

光源氏の青春像、娘に先立たれた桐壺の更衣の母の老いの姿、人を愛することを知った時、すでに死がせまっていた葵の上などを通して、現代にかかわる様々な問題と重ねながら、生きた源氏物語を読み続けていきたいと考えています。
地味な活動ではありますが、少しでも地域社会の知的センスの向上に寄与できればと思います。

この欄では、月2回(第1・3土曜、午後2時から3時半、住友ビル7階)の講義での話題を中心に書きたいと思います。
いろいろな感想などお寄せ下さい。

(2004年9月掲載)